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山のリゾート、ぜんぶ同じではありません——11の市町村を国のデータで並べてわかった4つの型 ニセコ、白馬、軽井沢、飛騨高山、山中湖。

  • 1 日前
  • 読了時間: 7分

ひとくちに「山のリゾート」「観光地」「移住先」と言いますが、国が出している地価のデータ、11の市町村を並べてみると、これらがまったく違う4つの型に分かれることがわかりました。

同じ「観光地」に見えても、土地の値段の動き方、売り買いされる量、そこに住んでいる人の暮らし方が、まるで違うのです。

今回は、八ヶ岳西麓の三町村(茅野市・富士見町・原村)を真ん中に置いて、各地の山岳リゾート・観光地と並べてみます。使うのは国土交通省が公開している地価調査・取引件数・不動産鑑定士の記録です。

まず、9年間の地価の動きを並べる

国の地価調査(毎年9月発表・別荘地や集落の地価を映すもの)で、同じ地点が2016年から2025年までの9年間でどう動いたかを追いました。同じ標準地を追跡しているので、その場所の実際の値動きです。

市町村

9年間の地価変化(中央値)

6年間の取引件数

倶知安町(ニセコ)

+196%

407件

野沢温泉村

+48%

50件

軽井沢町

+45%

2,449件

白馬村

+24%

356件

山中湖村

+6%

263件

原村

±0%

256件

富士見町

−11%

428件

高山市(飛騨高山)

−12%

1,680件

北杜市

−14%

1,603件

茅野市

−17%

925件

八幡平市(安比高原)

−19%

572件

この表をじっと見ると、「観光地だから地価が上がる」という単純な話ではないことがわかります。同じ有名観光地でも、ニセコは+196%、飛騨高山は−12%。正反対です。

ここから、4つの型が見えてきます。

第1の型:外資に買われて跳ねた土地(ニセコ)

倶知安町(ニセコ)の+196%は、図抜けています。一番上がった地点は9年㉧26,000円から167,000円へ、6.4倍になりました。

この値上がりは、海外からの投資で進みました。円安を背景に、香港やシンガポールなどの資金が現金で流れ込み、相場を押し上げた、と報じられています。地元では、ラーメン一杯3,000円、リフト券一日9,500円という、富裕層の基準で物価が決まる状態になっています。

注目したいのは、取引件数が407件しかないことです。あれほど世界的に名前が知られているのに、八ヶ岳西麓の富士見町(428件)とほぼ同じ。つまり、少数のとても高い物件が動いているだけで、普通の人が普通に売り買いする市場は、見た目の派手さほど厚くありません。値段は跳ねたけれど、暮らしの売買が増えたわけではない。

2025年4月には、219室のコンドミニアムを備える予定だった最大級のリゾート開発が、工事3割で破綻しました。負債は数十億円。鉄骨だけの建物が青いシートに覆われたまま止まっています。外からのお金の勢いで上がった土地は、勢いが引くと一気に揺れます。

第2の型:観光客は来るが、土地は地元の暮らしのまま(飛騨高山)

ここが、今回いちばん面白い発見でした。

飛騨高山は、外国人観光客であふれる、日本有数のインバウンド観光地です。それなのに、地価は9年で−12%。下がっています。

なぜか。国の鑑定士が高山の標準地に書いている言葉を見ると、答えがあります。

「一般住宅、店舗、事務所等が混在する住宅地域」「区画整然とした住宅地域」「中小規模一般住宅の多い既成住宅地域」。別荘でもペンションでもリゾートでもなく、普通の人が住む生活の町です。観光客は古い町並みを歩きに来ますが、土地そのものは地元の暮らしの場として残っている。だから外からの投資で跳ね上がることもなく、取引件数は1,680件と活発で、生活の売り買いがちゃんと回っています。

飛騨高山は江戸時代の天領で、町衆の自治が強く残ってきた土地です。観光で人は来るけれど、土地は住む人のもの。「観光客が通過する町」と「投資が土地を買う町」は、別物だということが、この数字に表れています。

第3の型:別荘地として静かに保たれた土地(軽井沢・白馬・山中湖)

軽井沢(+45%)、白馬(+24%)、山中湖(+6%)は、別荘地型です。

鑑定士の記録を見ると、軽井沢は「中規模別荘が見られる大規模分譲別荘地域」、山中湖は「一般住宅を中心に別荘等も見られる住宅地域」「ペンション等が立地する湖畔沿い」。別荘とペンションの土地です。

このタイプは、ニセコのような爆発的な跳ね方はしませんが、緩やかに上がっています。首都圏から近く、古くから別荘地として知られ、一定の需要が途切れない。ただし、これらの土地の価値は「別荘を持ちたい人がどれだけいるか」という外からの需要に支えられている点で、地元の暮らしとは少し距離があります。景気や流行で需要が変われば、価格も動きます。

軽井沢の取引2,449件は全市町村で最多ですが、これは別荘の売り買いが活発という意味で、ニセコとも飛騨高山とも違う「別荘マーケットが大きい」型です。

第4の型:外に振り回されず、暮らしが続く土地(八ヶ岳西麓)

そして、八ヶ岳西麓の三町村です。

茅野市−17%、富士見町−11%、原村±0%。数字だけ見れば「下がっている・横ばい」で、地味です。けれど、これを「出遅れ」と読むのは早い。

鑑定士が茅野市に書いている言葉は「農家住宅の中に農地等が見られる住宅地域」。ニセコのコンドミニアムでも、高山の観光商店街でも、軽井沢の別荘でもなく、農地と住宅がまざった暮らしの土地です。

取引件数を見ると、原村256件、富士見町428件。派手ではありません。でもこれは、住んでいる人が土地を手放さない、外からのお金で総取りされていない、という静かな事実の裏返しです。

八ヶ岳西麓は、四方を高い山に囲まれた標高900〜1,500メートルの土地で、新幹線やリニアの大きな動脈からも外れています。だから外からの開発の波が届かず、区・畑・山林という暮らしの土台が、いまも実際に機能したまま残っています。

外からのお金の勢いに値段を預けていない。だから勢いが引いても揺れない。動かないことは、外に振り回されない、ということでもあります。

外からの投資で一気に上がる土地は、その勢いが引けば一気に下がります。上がるときに派手な土地は、下がるときも派手です。八ヶ岳西麓は、土・水・森・地縁という暮らしの土台が分厚く残っているぶん、外からの波が来ても来なくても、暮らしそのものは揺れにくい。これは、土地の値段の話というより、暮らしの足場の話です。

4つの型を、ひとつの表に

地価

土地の中身

価値の源泉

外資買収型

ニセコ

急騰→破綻も

コンドミニアム・別荘

海外からの投資

観光客通過型

飛騨高山

横ばい〜微減

生活の町

地元の暮らし(観光は通過)

別荘地型

軽井沢・山中湖

緩やかに上昇

別荘・ペンション

別荘を持ちたい外の需要

地縁残存型

八ヶ岳西麓

横ばい〜微減

農地+住宅

そこに住む人の根の深さ

同じ「山のリゾート」「観光地」でも、土地の値段が何によって決まっているかが、それぞれ違います。海外の投資で決まる土地、別荘需要で決まる土地、観光客が来ても揺るがない生活の土地、地縁に支えられた暮らしの土地。

どの土地で暮らすか、ではなく、何に値段を預けるか

これは、どの土地が良い悪いという話ではありません。

ニセコの華やかさを求める人もいれば、軽井沢の別荘文化を愛する人もいる。飛騨高山の生活の厚みに惹かれる人もいる。それぞれに価値があります。

ただ、暮らしの土台を選ぶとき、ひとつだけ知っておくと役に立つことがあります。その土地の値段が、何によって決まっているかです。

海外の投資で決まる土地は、その投資が引けば揺れます。別荘需要で決まる土地は、需要が変われば動きます。一方、そこに住む人の暮らしと地縁で支えられた土地は、外の事情に左右されにくい。派手には上がらないかわりに、外の勢いが引いても、暮らしはそこに続きます。

八ヶ岳西麓を選ぶというのは、地価の値上がりに賭けることではありません。自分の暮らしの土台を、外の判断ではなく、自分の手の届くところに置く、という選び方です。

井戸のある家、薪の出る山林、野菜のとれる畑。派手な準備ではなく、日々の暮らしに組み込まれた、静かな自前化。

これは流行を追う話ではなく、自分の暮らしを、自分で選ぶ、というだけの話です。

このコラムで使った数字は、すべて国土交通省が公開している地価調査・地価公示・不動産取引価格のデータ(2016〜2025年)にもとづいています。八ヶ岳ライフでは、こうした公的なデータを、土地を見るときのひとつの背景として参照しています。

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